
ポンペイ市内に奉安殿が残っているとの話を聞いて、案内してもらった。民家の敷地の奥手にあり、通りからはもちろん見えない。

住人に許可をもらい敷地に入るも、植物に覆われていて、目の前まで案内してもらわないと見つけることができない。

奉安殿は、御真影(天皇・皇后両陛下の写真)と教育勅語が納める建物のことである。戦前、戦中に皇民教育の一環として設置が始まったもので、当初は校舎内、後に独立した建物が作られるようになった。この奉安殿は明らかに独立型である。
高温多雨の気候に対応するためか、高床式になっている。扉は下部が腐食しているが、きれいに朱色に塗られている。おそらく塗り直されたのだろう。壁面にも一部に同じ色調の朱色が残っている。屋根には草木が伝い、ぱっと見ると茅葺の屋根のようにも見える。

観音開きの朱色の扉を開けてくれた。中にはもちろん御真影も教育勅語もなく、ガランとしていた。倉庫のように使われていなかったことに少しホッとした。
かつては、前を通る際に教職員ともども、最敬礼が求められたという奉安殿。日本国内に建てられたものでさえGHQの神道指令に基づき多くが撤去され、ほとんど残っていない。にもかかわらず、この南洋の地に未だにひっそりと残っているとは。